遷延性悲嘆症

遷延性悲嘆症とは


遷延性悲嘆症(Prolonged Grief Disorder)とは、大切な人を失った後、深い悲しみが長期間にわたり続き、日常生活に大きな支障をきたす状態です。

 

米国精神医学会(DSM-5-TR)*では、親しい人との死別後 1年以上経過しても悲嘆反応が持続し、著しい苦痛や日常生活への支障を引き起こしている状態を「遷延性悲嘆症」と位置づけています。 

 

遷延性悲嘆症の悲しみは、うつ病と異なり、広範な無価値感や失敗感にではなく具体的な喪失に関連しているとされます。これまでの様々な研究から、 死別を経験した人の2.4%~4.8%がこの状態になる可能性があると考えられています。

 

子どもとの死別による悲嘆の研究は少ないものの、乳幼児突然死症候群(SIDS)などで子どもを失った場合、母親の悲嘆が遷延性悲嘆症へと重症化させる可能性が高いことが知られています。

 

遷延性悲嘆症の治療には、悲嘆に焦点を当てた認知行動療法(CBT)が有効とされています。悲嘆が強く長引いている場合は、必要に応じて個別のグリーフカウンセリング(有料)もご利用いただけます。

 

*DSM-5-TR: 「DSM-5-TR 精神疾患の診断・統計マニュアル」米国精神医学会(APA)

 


最新のDSM-5-TRによる診断基準


アメリカ精神医学会による最新のDSM-5-TR(精神疾患の診断と統計マニュアル)では、遷延性悲嘆症は以下の基準で診断されます。

〔1〕主要基準

大切な人を失った後、12か月以上(子どもの場合は6か月以上)にわたり、以下の症状がほぼ毎日持続する。

  • 故人への強い喪失感や渇望。
  • 故人との再会を夢見るような強い願望。

〔2〕不随基準

上記に加え、以下のうち3つ以上が持続する。

  • 自分の一部が失われた感覚。
  • 強い孤独感や社会的孤立感。
  • 故人との思い出に過度にとらわれる。
  • 将来への希望喪失や無力感。
  • 感情的麻痺(喜びや満足感を感じられない)。
  • 死亡した人への怒りや苦しみ。

これらの症状が日常生活や社会的機能に著しい障害を引き起こしている場合、遷延性悲嘆症と診断されることがあります。

〔3〕遷延性悲嘆症のリスク要因

以下のような状況にある方は、遷延性悲嘆症を発症するリスクが高いとされています。AYA世代の家族は、潜在的にリスクがあります。

  • 突然死や若年者の死など予期せぬ喪失体験。
  • 故人との関係が非常に近く依存的であった場合。
  • 社会的孤立や支援ネットワークの欠如。
  • 過去にうつ病、不安障害など精神的健康問題を抱えていた場合。

〔4〕適切なサポートと治療の重要性

遷延性悲嘆症の治療には、専門的な支援が必要です。特に認知行動療法(CBT)は、有効な治療法としてのエビデンスがあり広く認められています。また、スピリチュアルケアやグリーフケアも重要な役割を果たします。

 

HOPE-AYAでは、遷延性悲嘆症や深刻なうつ病、不安障害などの症状を抱える方に向けて、代表理事による個別カウンセリングをご提供しています。

 

専門家でありながら同じ悲しみをもつ代表理事が、一人ひとりに寄り添いながら、認知行動療法に基づく専門的な心理療法を行います。

〔5〕個人カウンセリング

個人カウンセリングでは、主として、認知行動療法(CBT)に基づくカウンセリングによって、うつ病や不安障害、深刻な悲嘆などに対応します。

 

詳しくは、「個人カウンセリング/予約方法」をご覧ください。

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ご家族へのメッセージ


「自分はおかしくなってしまったのではないか」、「自分が弱いからだめなんだ」、「がんばらないとみんなに迷惑をかけてしまう」。こんなふうに考えてしまうことは、自然なことです。

 

それほど大切な人だったのです。遷延性悲嘆症は、誰にでも起こり得るものです、決して「弱さ」ではありません。


 

どうか一人で抱え込まず、専門家に相談してください。適切な治療やカウンセリングを受けることができます。「どこに相談したらよいかわからない」、「こんなことで相談するなんて迷惑だ」、「自分でなんとかするべきなんだ」と思うとき、HOPE-AYAに相談してください。HOPE-AYAでは、ご家族一人ひとりが安心して相談できる場をご用意しています。

代表理事 関谷 共美

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